イベントフォトレポート

お台場がクルマ文化に染まった

スマホに万歩計をインストールして日頃から運動を心がけている人は、今年の東京モーターショーにはぜひ足を運んだほうがいい。クルマやその文化に興味があって、これだけの展示内容なら、歩きまくったって決して苦にならない。カロリー消費にもなって一挙両得だ。今年で46回目を迎える東京モーターショーは、今年、会場が東京ビッグサイト単体から大きく拡大して、お台場周辺エリアまでを巻き込んでいた。主要展示棟では、多種多様な自動車メーカー、パーツメーカー、サプライヤーなどがブースを出展し、その導線にはモータースポーツの世界を始め、あらゆるクルマ文化の幅を感じさせる展示や、未来を見据えたような展示・試乗会が実施される。大手自動車メーカーの内容ならば、今や電波の波に乗って一瞬で伝達される。しかし、その場に足を運び、五感で触れ合うからこそ得られる情報も盛りだくさん。事前の情報が過多だからこそ、モバイル機器を使ってスクロールしただけで物知り顔になってはいけない。自分自身で足を運び、情報を仕入れ、その魅力を体感することこそが大事だと実感させられた。モーターショーという“展示会”あるいは“見本市”の基本を知った。

「継続は力なり」というメッセージ

大きな発展を遂げた東京モーターショーに、2003年から連続出展しているのがソニックデザインだ。今年もその例に漏れず9回目の出展として、東京ビッグサイトの西展示棟4階「西3ホール」に、おなじみ黒い格子状のブースが設けられた。「The Suite Lounge」と名付けられたブースの内部は、既存ユーザー、取引先と情報交換をしたり、商談をするためのクローズド・スペースとなり、ブースの外枠を取り囲むようなショーケースの中にはソニックデザインの製品群が展示される。毎年、同じ様相を貫くのは、鮮度や話題性よりも、ブランドとしての普遍性を重視するため。刹那なトレンドに惑わされない一貫した姿カタチで、主義主張を感じさせながらも落ち着いた表情を保っている。ソニックデザインの製品は、そのどれもが自動車のライフを超越した、一生モノとして付き合ってもいいものばかり。そんな製品を体現するかのような雰囲気が宿っていた。

未来を感じさせるコンセプトモデル

事前の想定よりも会場全体は大きくなったが、今年、ソニックデザインが公開したのは、より小さくなった未来のスピーカーユニットだった。ソノキャストを搭載した新設計アルミシームレスエンクロージュアに、52mm口径ワイドレンジドライバーをフレームレスにて搭載したフルレンジドライバー・モジュールが初公開されたのである。かねてよりソニックデザインが追求してきた「1本の小口径に圧倒的な高性能を盛り込むという思想」の新しい具現系である。The Suite、Sound Suiteを筆頭に、52mm口径の可能性を信じて疑わない彼らの、新たな一歩だとも言える。エンクロージュアとスピーカーユニットを一体化、さらに両脇に振動板を近接配置するなど、詰め込まれる技術は多岐にわたる。この小さな箱にソニックデザインの最先端技術が凝縮される。会場ではこのコンセプトモデルを使ってメルセデス・ベンツAクラス(W177)への装着を見越したシステムが参考出品された。この新世代メルセデスは、ドアのインナーパネル裏側から純正スピーカーがリベットで固定されているため、交換技術や取り付け時間などの問題や、取り付け方法、工数の観点から、特にスピーカー交換が難しいとされている。しかし、このコンセプトモデルを利用すれば、純正スピーカーの取り外しが不要になり、装着に対する敷居はぐっと下がる。あるいはこの小型設計であれば、メルセデス以外の車種に関しても、装着できる車種や取り付け場所の幅が拡がることになる。現時点では参考出品であり、決してAクラス用の製品化が確定したわけではない。現在、車種適合を始めとした、絶え間ない開発が続いている。

ユーザーとメーカーとのコミュニケーションの場

逆に言えば、このコンセプトモデルの未来図は、まだ白紙であり未知数でもある。無限の可能性を秘めた製品だからこそ「東京モーターショーを通して、ユーザー様やショップ様のご意見、ご要望を遠慮なく聞かせて頂きたい」と、ソニックデザインの代表取締役、佐藤敬守は訴える。そして「そこにモーターショーの意義がある」とも付け加えた。ここはソニックデザインが掲げるカーオーディオの考え方と、その技術を深く知る場である。あるいはソニックデザイン側へ意見や要望をぶつける、コミュニケーションの場としても機能している。「ソニックデザインのユーザー同士と、それを扱うプロショップを絡めて、好きなだけ試聴体験や意見交換ができる」というのがリスニングキャンプであるならば、東京モーターショーは「メーカー側と消費者とのコミュニケーションを図る」という趣旨がある。双方ともに、ソニックデザインにとって欠かせないイベントである。今回、公開されたコンセプトモデルは、まだ産声を上げたばかり。これから製品として力をつけ発展していくためには、決して作り手側の独りよがりではなく、ユーザーの声が欠かせない。共に育ち、そして育てていくためにも、ぜひソニックデザインのブースへと足を運び、どんどん意見をぶつけてみたい。コンセプトモデル以外にも、ソニックプラスを中心とした新作が数多く展示されていて、それらの詳しい話を聞くことだってできる。東京モーターショーは、11月4日(月)まで開催される。きらびやかなコンセプトカーや新型車を求めて歩き疲れたその先に、未来のスピーカーユニットがあなたを待っている。
〈モータージャーナリスト 中三川大地〉

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