ソニックデザインのカタログやウェブサイトには、こんなコンセプトが表記されている。そのための商品展開とそれらを支える技術を掘り下げると、枚挙にいとまがない。しかし、ハードではなくソフトという面で、冒頭のコンセプトを支えるのが、リスニングキャンプの存在である。
ソニックデザインユーザーが“いい音”を楽しみながらドライブして集まり、互いのクルマに乗り込み試聴しながら、あるいは新製品やデモカーに触れながら、お客さんと販売店、そしてメーカー(ソニックデザイン)の相互が深く結びついていくイベントである。その考え方に共感し、なにより心から楽しんできたリピーターたちの間ではすっかり恒例行事となった。
その9回目にあたる「ソニックデザイン リスニングキャンプ9」が、今年は例年より少し遅い10月14日(日)に、例年同様となる女神湖の特設会場で開催された。毎年、晴天に恵まれるのが通例となる同イベントにしては珍しく、当日は朝から雨模様だった。それでもユーザーの足取りは軽く、誰もがイベント開始前に集まり、走ってきた車体の汚れを拭いている。その熱意が悪天候を吹き飛ばしたのか、イベント開始早々から雲には切れ間が見え、午後には青空が拡がるように。爽快な青空と明るい太陽が降り注ぐ車内で聴くソニックデザインは格別だ。しかも音漏れがしないメリットによって、場が喧騒に包まれることもないのがいい。
冒頭で「ソニックデザインユーザーが集う」と記したが、決してユーザー限定の閉鎖的なものではない。誰彼問わず来訪を歓迎しており、その雰囲気を見ても敷居の低いフレンドリーな空気感だ。実際、今年はXaCAR 86&BRZ magazine等を刊行する交通タイムズ社とのコラボにより、トヨタ86/スバルBRZのオーナーズミーティングが同じ会場にやってきた。86台近い86とBRZが並んだ姿は圧巻で、しかもそのどれもが思い思いにカスタムされている。カーオーディオは興味の範疇外というオーナーも、気軽に試聴できるリスニングキャンプに馴染んで、ソニックデザインの魅力を体感していた。
すべてソニックプラスセンターと統一された各認定販売店のデモカー、その詳細は下に記す。それらはカーオーディオ趣味に飛び込む第一歩となるような指針として良質にまとめられたものから、カーオーディオ趣味人の誰もが夢見る最高峰の仕上げまで千差万別だった。「特にハイエンドオーディオを組んだデモカーの試聴依頼が絶えなかったんです。これだけご興味を抱く方が多いという事実を前に、カーオーディオ趣味の未来は明るいと感じました」と、販売店スタッフのひとりはそう話していた。
気軽に試聴できるのは、各認定販売店のデモカーだけではない。ソニックデザインユーザーにして“音の使節”という意味を持つアンバサダーたちの愛車はもちろん、それ以外の来場者もまた快く車内に座らせてくれる。普段、他人の音を聴くことなどなかなか難しく、聴けても馴染みのショップのデモカーや友人のクルマ程度だろう。「他人の音を聴くことは、自分のカーオーディオライフにとってかけがえのない財産になる」と、サウンドクリニックを担当するカーオーディオ評論家の黛 健司氏はいつも強調する。もちろん「誰かの音を聴く」だけでなく「誰かに聴いてもらって意見をもらう」ことも貴重な経験だ。黛氏はサウンドクリニックと称して、真剣勝負でプロの意見をぶつけてくれる。リピーターたちの間ではこの考え方がすっかり浸透したのか、1台でも多くの“音”を聴こうと、あちこち動き回っていた。
主催者側もこの動きを加速させたいと、今回からは参加車両すべてのシステムチャートが配布されていた。やみくもに動き回るだけでなく、システムチャートを見て「気になるシステム」や「購入検討中のシステム」などを試聴しやすくなっていた。
午後からの晴天も手伝い、イベントは大盛況だった。デモカーにしても参加車両にしても過去最大級の規模だった。北は仙台、西は神戸からと遠路はるばるやってきた方は多かったが、何しろ誰もが、道中は楽しいドライブなのだろう。仲間うちやショップ主導でのツーリングを伴ってやって来る方々も多く、「いい音と走る」ことを誰もが実践していたようだった。
クルマの電脳化や半自動化が加速度的に進行し、クルマに対して趣味性を失われたかのような白物家電化が叫ばれている。法規制や安全・環境対応という意味を含めて、スポーツドライビングの世界とかチューニング業界は、そうした逆境にあるのかもしれない。ただし「走る楽しさ」「クルマの魅力」は、決してスピードやスリルを追い求めるだけではない。もちろん、エンジンや足まわりの感触を楽しむだけでもない。ソニックデザインが提唱する「いい音と走る」ことは、その顕著な例で、新しいクルマ趣味のあり方のひとつを教えてくれるようだった。古くからのカーオーディオ趣味人はとっくに気が付いているだろうが、ソニックプラスの普及に伴う新ユーザーたちは、このことを改めて実感していたようだ。
「いい音と走った時間は、あなたの財産」であり、またクルマ趣味の未来までを支えてくれる。そのことを実感させてくれるのが、ソニックデザイン リスニングキャンプである。
〈モータージャーナリスト 中三川大地〉
ソニックプラス(SP-P30M)をフロントドアに使うことを前提に、サブウーファー(SW-77R)を組み合わせ、ダイヤトーンのサウンドナビ(NR-MZ300PREMI)を介して操る。さらにはリアスピーカーにUNIT-N52MAを組み合わせる提案も。わかりやすい接続と構成で、すべての音域の質感を底上げしたかのような癖のない音色を奏でる。同センターが持ち込んだもう1台のプリウスPHVが最高峰を目指した仕様であるなら、こちらはソニックプラスユーザーの次なる一手として、実に参考になるデモカーだ。
レヴォーグを含むスバル車用のソニックプラス(SFR-S01R)に加えて、ダッシュボード左右にオリジナルステーを使ってワイドレンジトゥイーター(UNIT-N52N)を組み合わせた。装着位置を徹底的に研究した上でのオリジナル取り付け術だ。そのほかにSW-77Nを組み合わせる。車両側は無加工ながらもデッドスペースを活かし、3Dプリンターによるオリジナルパーツを用いて取り付けるのが得意なソニックプラスセンター新潟ならではの1台だ。ソニックプラスから次なる一歩としてのヒントが数多く潜む。
リアの純正スピーカー位置にスバル・レヴォーグ用のソニックプラス(SR-S01F)を装着し、それをサブウーファーとして機能させる。その上でプレミアムラインのUNIT-N55GAとUNIT-N70Rをフロント部分に集約して、その能力を最大限に発揮させた高品質な86に仕上げられた。あくまで「クルマが主役」と考える同センターだけに、86ならではの運動性能を損なわず、限られたスペースでも最大限にいい音を提供している。変な色づけのない素直な音色は、いつまでも聴いていたいような心地よさを感じる。
インプレッサ購入者の大半が装着するというディーラーオプションのパナソニック製8インチナビを使うことを前提に、より良い音を提案した1台だ。フロントにSF-S04M、リアにSR-S04Mとハイグレードモデルで統一した。幅広い層の音楽好きを満足させるような素直な音色を奏でるほか、決してドライバーオリエンテッドではなく乗員すべてにクリアなサウンドが届けられる。この個体はリアモニターを搭載しており、4名乗車で映像コンテンツを楽しみながら、疲れ知らずに長距離ドライブを楽しめるものだった。
「前に乗っていた86が初車検を迎える前に7万kmを超えまして、ディーラーで一目惚れしたC-HRに乗り換えました。だけどこれも1年半ちょっと経った今、もう4万5千kmを超えています」と、距離を感じさせないクリーンな個体を前にKさんは話す。ここまで走る理由は、日本各地の山を巡る登山が何よりの趣味だから。自宅の茨城から女神湖周辺なんて、近所までひとっ走りするかのごとく繰り出す。クルマとともに過ごす時間が多いからこそ、特にカーオーディオにはこだわるようになった。ソニックデザインと出会ったのは86の頃から。「高音のクリアさが全然違いました」として、徐々にカーオーディオにのめり込む。現在、このC-HRはUNIT-N52MAにSD-T18F、TBM-77Mでフロントを構成し、かつサブウーファーにTBM-SW77を仕込む。ヘッドユニットはダイヤトーンのサウンドナビで、アンプやケーブル類も煮詰めるという凝った仕上げ。とてもカーオーディオ歴数年とは思えない。ソニックプラスセンターいわきを中心として、周囲にオーディオ仲間が増えたことが手伝って、たくさんのアイディアを教えてもらい、格安で譲り受けた製品も多いという。「演歌と民謡以外は色々なジャンルを聴きます。山へ行くときは元気な曲で、帰りはリラックスできるような曲が多いですね」と、Kさんは休日になるたびに、山の大自然が奏でる荘厳な音と、ソニックデザインの奏でるクリアサウンド、その両方を満喫している。
「とにかく電気自動車という乗り物に乗ってみたかった」と断言するのは、BMW i3で金沢から駆けつけたNさんだ。自宅に充電設備まで設けてEVライフを送り始めた。この日のようなオーディオ仲間たちとのツーリングでは、常に充電設備を調べながら時間と距離配分を考えるようになったが、それすらゲーム的に仲間たち全員で楽しんでいる。カーオーディオという世界から見ると珍しい車種なだけに、好きだったオーディオ構築は難儀したようだ。とりわけ興味が湧くのはフロントスピーカー。なんとメルセデス・ベンツCクラス用のSC-205Mが綺麗に収まっている。「F30(3シリーズ)用が使えると聞きましたが、それじゃあ面白くないな、と。だけど、SC-205Mが入りそうだったので」と、Nさんが相談を持ちかけたのはサウンドクリエイト金沢だった。入らなければ加工することに納得したうえで計画は進行し、結果としてはギリギリ装着できたという。他にはサブウーファー(TBF-SW77)を組み合わせた仕様としている。EVであるがゆえエンジン音はいっさいない。ロードノイズを含む走行音こそあっても、内燃機関よりは優れた音空間を活かした、納得の仕上がりを持つオーディオに仕上がったという。「情報がとにかく少ないのがネックですね。純正ナビも変えられないし、電球ひとつ換えてもエラーが出たりする。それと向き合いながら、オーディオ趣味を続けていきたい」と括るNさん、EVの先駆者的な趣味人である。
鮮やかな黒色が美しいスバル・レヴォーグに乗るUさんは、フロントで完結させるシステムにこだわる。現在の仕様はフロントスピーカーにUNIT-N70N、トゥイーターにUNIT-N55Nを装着し、SW-77Nのサブウーファーを組み合わせ、デジコア808iを用いる。見た目と同様にクリーンなシステムだが、これにはUさんならではの考え方がある。「釣りが趣味なんですが、4〜5時間かけて釣り場まで行くことばかりなので、そこそこの積載性を持っていて道中も快適かつ刺激的に過ごすためには、レヴォーグしか選択肢がない。さらに決め手は、車中泊する際にラゲッジが完全にフラットになること。中途半端にシートで仮眠するより、疲れが劇的に減ります」という。ミニバンなら車内が広くて快適だが、それでは道中の走りを楽しめないと切り捨てた。フロント完結ユニットは、車中泊などラゲッジを有効活用するためなのだった。そしてその考え方を、高い次元でまとめてくれたのがソニックデザイン一連の製品と、そしてインストーラーの技術である。「釣りに行くクルマだからといって、泥や塩だらけにしておくのは嫌なんです。常にクルマは綺麗にしておきたい」と、購入から2年でもう3万5000kmを刻んだ愛車を前に話す。Uさんは休日のたびにソニックデザインの奏でる良音に癒されながら、釣りへ繰り出すときはごくのんびりと、帰りはレヴォーグの動力性能を活かしながらハイスピードで。釣った魚が新鮮なうちに家路に着く。
「ソニックデザイン・カスタム」と称された自作のシステム図に、Aさんのカーオーディオに懸ける情熱を感じさせる。見た目は純正と一切変わらないものの、限定品であるプレミアムラインのユニットSD-N52GAを、フロントとリアのドアに加え、ラゲッジにあるサラウンドスピーカー、そしてセンターコンソールにあるセンタースピーカーと合計7つ、さらにSD-130GAをサブウーファーとして2つ搭載する。純正のシステムを活かしながら、すべてソニックデザインのハイエンドスピーカーへ入れ替えた格好となる。だからこそ堂々と「ソニックデザイン・カスタム」と名乗る。「以前乗っていたメルセデス(W204)の純正オーディオに不満を抱いて、サウンド21さん(ソニックプラスセンター大阪)に相談したのが始まり。最初は何も知らなかったけれど、お店でいろいろ教えてもらい、イベントに参加するうちに、感化されていきました」と、笑みを浮かべる。ちなみにAさん、車内に何も置かず、クルマは常に綺麗に。できるだけシンプルなものを好むからこそ冒頭のシステムに落ち着いた。「イベントは楽しい。色々な方がシステムアップをされているので、それを聴くのはいい刺激になります」と言いながら、Aさんは今後も愛車のシステムアップを考えている。「目下の課題は、前車から外したデジコア808iを、現在の9スピーカーとどう組み合わせるかってこと」と、悩みは尽きない。しかし、そんな課題すら楽しんでいるようだった。
リスニングキャンプに来ると、僕はいつも安心します。何しろ全員のレベルが高い。ひどい音を奏でるクルマなんて皆無で、どなたに対しても安心して接することができます。私は主にサウンドクリニックを通して、直接ユーザーの方々へ意見させていただいています。それは時として細かいことだったり、厳しい意見だと取られるかもしれません。しかし、皆さまの絶対的なレベルが高い以上、さらにソニックデザインのポテンシャルを引き出してほしいという切なる願いを込めての意見です。昨今、ソニックプラスの普及によってユーザーの層が拡がったと見受けられます。カーオーディオに対する敷居を下げたという意味では歓迎すべきこと。しかし、だからこそ私はカーオーディオの奥深さをより多くの方々へ訴えていきたい。ソニックプラスはお手軽で、加工も一切不要です。その前に自動車メーカー純正オーディオの出来栄えも素晴らしくなっています。でも、そこから一歩踏み出して、よりディープなメカニズムを求めると、果てしなく深いカーオーディオの世界が拡がっている。そんな世界もちゃんと伝えていきたいと思います。