今回は記念すべき10回目だ。初開催は2013年6月だったから、気がつけばもう6年を超えていることになる。2019年9月22日(日)、ソニックデザインユーザーの間ではすっかり定例会として認知されている「ソニックデザイン リスニングキャンプ10」が開催された。
場所は例年同様、女神湖の特設会場にて。事前には台風の直撃が危惧されていたものの「このイベントは必ず晴天に恵まれる」というジンクスを裏付けるかのように青空の下での開催となった。むしろ夏が戻ってきたかのような汗ばむ陽気。だからどこかお祭りムードで、来場者のフットワークも軽い。
お祭りムードを後押しするのが、XaCAR 86&BRZ Magazine等を刊行する交通タイムス社とのコラボによって実現した、トヨタ86/スバルBRZのオーナーズミーティング「XaCAR86BRZ SONIC!!」の併催だった。色とりどりの86/BRZが並んだ姿は圧巻で、しかもそのどれもがオーナーの趣味嗜好を反映したかのようにカスタムされている。全国を回っているこのイベントは、催し物やMCトークショーなど見どころ満載だ。86/BRZのユーザーはソニックデザインを、逆に他車種に乗るソニックデザインユーザーは86/BRZに興味津々のようだった。
10回目を迎えるにあたり、リスニングキャンプのコンセプトを振り返る。堅苦しい申し込みなど不要で、誰もが気軽に立ち寄れて、コンテストなどの勝負事はしない。誰もが自分のペースでカーオーディオと向き合えるフレンドリーなイベントを目指してやってきた。果たしてその目的は、ちゃんと達成されているようだった。今では近しい友人やショップ以外の方々から、情報交換やシステム評価など、つまりはオーディオ談義のできる場所として重宝がられているようだ。
年を追うごとに常連の方々が増えているものの、かといって初参加の方もけっこういて、なにより閉鎖的な雰囲気が皆無なのがいい。ホームオーディオ好きだった方がカーオーディオに興味を持ち始めて参加していたり、また走りを楽しむスポーツカーとして86/BRZに乗っていた方が徐々にカーオーディオに興味を覚えたり、と、様々な入り口があることを知った。敷居の低いソニックプラスの普及および、全国的なソニックプラスセンターの確立は、一歩ずつ確実に、カーオーディオ好きを増やしている。
そうした方々にとって、各認定販売店のデモカーや、ソニックデザインユーザーにして“音の使節”という意味を持つアンバサダーたちの愛車を気軽に試聴できるのはいい経験だ。当日は参加車両すべての仕様がわかるシステムチャートが配布され、来場者は「気になるシステム」「購入検討中のシステム」などを搭載したクルマへ駆け寄ることができる。他人のクルマのオーディオを気軽に聴く機会などなかなかないだけに、誰彼構わず声をかけて聴かせてもらえる貴重な場所だ。いちいち家に上り込まなければならないホームオーディオにはない、カーオーディオ趣味ならではの特権だと思う。
さらにイベントのひとつの目玉は、カーオーディオ評論家の黛 健司氏が実施するサウンドクリニックだろう。「誰かの音を聴く」だけでなく「誰かに聴いてもらって意見をもらう」ことも貴重な経験だ。それが半世紀近くカーオーディオと向き合ってきた黛氏の忖度のない意見ならば特に。「良いものはいい、でもここが足りない」と、真剣勝負で意見をぶつけてくれる。6年も継続していると、毎年のようにサウンドクリニックに挑み、自分のカーオーディオを成長させていったユーザーもたくさんいる。こうした部分にもイベントの成熟を感じさせる。
サウンドクリニックに参加する方以外であっても、リピーターの方々は常にオーディオを成長させている。その進化過程を見て談義するだけでも楽しいし、クルマを乗り換えてもカーオーディオは移植するといった歴史をみるのも興味深い。新品からのエイジングによる成長に始まり、10年以上も立派に現役でいられる耐久性など、ソニックデザイン製品の懐の深さを感じた。
各認定販売店のデモカーも、毎年のように新たなカーオーディオを提案してきた。純正+αで楽しめる仕様から、通を唸らすハイエンドなものまで多種多様だ。長年カーオーディオ趣味を貫く方はもちろん、初心者であっても気軽にカーオーディオの世界に浸かれる空間である。
上諏訪から霧ヶ峰を抜けて女神湖へと続くビーナスライン。本州のほぼ中央にある八ヶ岳中信高原国定公園の高原地帯を縫うように走る、日本でも有数のドライブルートだ。素晴らしい景色を楽しみ、ワインディングで運転の楽しさを感じながら、“いい音と走る”なんて最高の贅沢かもしれない。しかもその目的地には、気の合うカーオーディオ仲間との楽しい談義が待っている。
そんなソニックデザイン リスニングキャンプの醍醐味を、誰もが実感しているようだった。仲間うちやショップ主導でのツーリングを伴ってやって来る方々がいたり、家族連れで旅行がてら来たり、もちろんひとりで気ままに音楽を聴きながら来てもいい。そんな自由なイベントである。
「カーオーディオは複数のシステムの集合体。どう組み合わせて調律し、いい音へと導くか」と黛氏は述べていた。オーディオ自体が複数の集合体であるなら、このイベントもまた似たようなものだと思う。あらゆる催し物があって、そこかしこにコミュニケーションがある複数の集合体だ。人それぞれ、たくさんの楽しみ方があるからこそ、こうして発展を続けている。来年はいったいどんな表情を見せてくれるのか――。
〈モータージャーナリスト 中三川大地〉
2015年に初開催された86/BRZだけのオーナーズイベントが「86SONIC!!」だ。その後、XaCAR 86&BRZ magazineとのコラボを果たし「XaCAR86BRZ SONIC!!」として、北は北海道から南は沖縄まで、全国各地でイベントを開催している。MCによるトークショーやグッズ販売、ゲーム大会など、86/BRZ乗りではなくても楽しめるコンテンツが盛りだくさん。今回はリスニングキャンプ10との併催という形で、女神湖特設会場にやってきた。訪れた86/BRZは多種多様。サーキットを見据えた走り系からドレスアップ系などのカスタムカーが目立ち、中にはファミリカーとして乗っている方も大勢いる。もちろん、ソニックデザインを始めカーオーディオに興味を持っている方だって少なくない。誰もがカーオーディオにまつわる情報交換ができて、いい刺激になったようだ。
86ならではの運動性能を損なわず、限られたスペースで良質な音空間を構築する。ドライバーに正対して配置されたワイドレンジトゥイーター(UNIT-N55GA)と、リアスピーカー位置に配したサブウーファー(SR-S01F)を、ドアに設置したスピーカー(UNIT-N70R)とのコラボでまとめあげる。調律に用いたのはダイヤトーンのサウンドナビ(NR-MZ200PREMI)だ。まるでプレミアムラインの見本のような1台。どこまでもクリアで情報量が多い音色は聴き疲れすることなく、いつまでも聴いていたくなる。
「昔は大型セダンに乗っていて、純正オプションでけっこういいオーディオシステムが付いていたから、それだけで良かった。むしろカーオーディオに過度な期待はしていませんでした」とHさんは言う。彼は根っからのホームオーディオ好き。妥協なく仕上げるホームを知るからこそ、音環境の悪いクルマでは音楽を諦めているところがあった。しかし、その後コンパクトカーに乗り換え、あまりにも貧弱な純正オーディオに辟易とさせられ、ソニックデザインと出会う。そうしたら一気にカーオーディオの道が拓けた。もともと音楽を聴くことは好きなだけに、自然な成り行きだった。現在の愛車であるプリウスを拝見すると、フロントにはD52NとUNIT-N52GAを組み合わせ、さらにリアにUNIT-N70Fを、さらにサブウーファーとしてB80Nを2基組み合わせた本格仕様だ。安全装備などの関係からデッドニングが難しいプリウスを前に、ソニックプラスセンター大阪と相談しながら組んだものだという。「今までは繊細な音色を感じ取りたいジャズやクラシックを、車内で聴く気にはならなかった。だけどこれは違う。今では自宅にいるときも、あえてガレージにこもって車内で聴くことまであります」という。こうした付き合いかたをするとき、ハイブリッドカーは好都合。もちろんドライブする際も音楽が欠かせなくなった。特に好きだという温泉巡り。道中でも“いい音”に包まれて癒される日々を送っている。
「今まで色々なクルマに乗ってきましたし、あらゆるメーカーのカーオーディオを試しました」と、カーオーディオ趣味歴の長いNさんが、現在、行き着いたかのようにサラリと転がすのは2シーターのオープンカー、SLK200だった。昔はアメ車やミニバンだったけれど、今では奥サマとふたりで生活してクルマは趣味でしか乗らないから、大型車は必要ないとのこと。だけど、もちろんオーディオは凝る。こだわりたいけれど見た目はすっきりさせたい彼にとって、ソニックデザインはうってつけ。現在、フロントスピーカーにUNIT-N70F、トゥイーターにSD-52Rを組み合わせ、シート下にサブウーファー(SD-130F)を潜り込ませる。他社製のアンプやプロセッサーを駆使して鳴らしているが、このインストールを担当したのがソニックプラスセンター柏(サウンドワークス)の中川さんだった。「中川さんとは10年以上の付き合い。音づくりはお任せしています。僕は彼の作る音を知っているし、彼もまた僕の好みを熟知してくれているから」と、信頼関係が築かれている。今ではこのSLK200でフュージョンやクラシックロックを聴きながら、時にオープンエアを感じてドライブを満喫している。「昔さんざん聴いていた曲でもね、擦り切れたカセットテープで聴いていた時は判らなかった、こんなに奥深い音色が潜んでいたのかと驚くんです」という。思い出の曲を、最高の音空間で聴き直したときの再発見を楽しんでいる。
リスニングキャンプには珍しいBMWミニで、しかもブリティッシュグリーンとレッドのツートーンをまとうジョンクーパーワークスでやってきたのはNさんだ。「MINIにはBMW譲りの“駆けぬける歓び”があります」として、昨年、少々退屈だった国産プレミアムカーから乗り換えた。昔からカーオーディオは好きだったので、前車からシステムの多くを移植して現在に至る。純正ドアスピーカー位置にバッフルを製作してD52Nを取り付け、リヤシートの足もとにサブウーファー(SW-77N)を搭載。それらをトランクに設置したデジコア808iで鳴らしている。ポップなミニのインテリアを損なわず、綺麗にインストールしたのはソニックプラスセンター金沢だ。「システムの移植に関しては、福田さんに相談したからこそ実現したようなもの。部品待ちや取り付け作業で、1ヶ月くらいクルマに乗れませんでしたけどね」と言うが、この日、納車から1年と経たずしてもう1万kmを刻んだメーターに、彼がこのクルマを気に入っている様子が伝わる。「今では通勤にレジャーにと、毎日このクルマに乗っています。昔はアップテンポの曲が好きで、そうした系統のJ-POPばかり聴いていましたけれど、今ではジャズなどといった繊細な音楽も楽しめるようになりました」と、好きな音楽の幅も拡げてくれているようだ。クルマが走り系だけに今後はあれこれカスタムもしたいそうだが、「オーディオ趣味との両立は資金次第」と苦笑いしていた。
毎回、サウンドクリニックとして参加した上で感じるのは、今では皆さん、相当高いレベルにおられるということ。とはいえ、まだまだ忌憚なき意見は言わせて頂いています。完成度が100%に近づけば近づくほど、よりいい音を構築するのは難しくなる。時に足踏み状態に陥ったり、よかれと思って施したものが裏目に出て逆戻りすることもあるでしょう。でも、平坦な道で楽々と突き進めるものなんて決して“趣味”にはなり得ません。困難に立ち向かうからこそ、ご自身の愛車の中で素晴らしい音が聴けたときの喜びは、何にも代え難いものがあるはずです。あらゆるシステムの集合体であり、日々進化し続けるカーオーディオの世界では、100%の完成というのはないのかもしれません。それでも、常に上を見て100%を目指してはじめて、95%のシステムを手に入れることができるのです。そうした意味でショップやメーカー、ユーザーの方々の音を知り、意見を聞くことができて、そして僭越ながら私のような者も意見させていただける。そんなリスニングキャンプは、カーオーディオを学ぶとてもいい場であると考えています。